祝 銀河英雄伝説DNT NHK放送決定記念 ヤンと民主主義についての考察
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①【NHK放送決定】NHK Eテレにてファーストシーズン「邂逅」(1~12話)、セカンドシーズン「星乱」(13話~24話)がOP、EDを新たにして放送決定!初回放送は2020年4月6日(月)午後10:50~となります。※放送日時は変更になる場合があります。#ノイエ銀英伝 pic.twitter.com/KJzN1plK1k
— 銀河英雄伝説DieNeueThese (@gineidenanime) 2020年2月13日
イヤッホオオオオオオオオ!!!!!!!!
注意
以下私の推しの一人であるヤンウェンリーについてつらつら語っています。
ネタバレもあります。苦手な方はプラウザバックをお願いいたします。
ヤンを原作で初めて読んだ時の印象は「主人公らしくない、人間らしい人だ」という印象だった。
記号で動く二次元の人間では語りつくせない、原作の言葉を借りればまさに「矛盾の人」という「記号」がヤンだった。
「ヤン」という人間はなんなのか。という疑問を抱えていくうちに私はいつの間にかヤンは私の「推し」になっていた。
原作版、石黒版(全部ではない)、フジリュー版、宝塚版を見てきて思ったのはヤンほど様々な解釈がされる主人公はいないということだ。
もちろんラインハルトも様々な解釈がされているが、ヤンはそれ以上に解釈がされていると思う。
以下石黒版、ノイエ版
銀河英雄伝説 本伝・第1期 | アニメ動画見放題 | dアニメストア
原作を読んだ脚本家、漫画家それぞれの「ヤン像」を表現し、それらをもって原作を読み返しても違和感がないのだ。
定まらさがヤンの魅力なのだろう。
では、「ヤン・ウェンリー」はなんだったのだろう。
私の推測になるが「ヤン」の正体は田中芳樹の「なぜ」の具現化だったのではないだろうか。
田中芳樹の知識量はすばらしい。(その一端をマックガーデン版の作者インタビューで垣間見ることができる。20代であれほど考えて銀河英雄伝説を作っていたことに驚きを隠しえない)
「恒久平和なんて人類の歴史上なかった。だから私はそんなもののぞみはしない。
だが何十年かの平和でゆたかな時代は存在できた。
吾々がつぎの世代になにか遺産を託さなくてはならないとするなら、やはり平和がいちばんだ。
そして前の世代から手わたされた平和を維持するのは、つぎの世代の責任
それぞれの世代が、のちの世代への責任を忘れないでいれば、結果として長期間の平和が保てるだろう。
忘れれば先人の遺産は食いつぶされ、人類は一から再出発する事になる。まあ、それもいいけどね。」
「私は最悪の民主主義でも最良の専制政治にまさると思っている。 」
ヤンの語る言葉はすべてに重みがある。
遠くを見渡すセリフの数々は読者と同じ目線に立っているのではないかとすら思える。
8巻までイゼルローンの面々がヤンに頼り切りになってしまう理由も理解できるほど。
私はヤンの言葉は田中芳樹の言葉だと思っている。
田中芳樹は戦後の生まれだ。
親世代には戦争を経験し、中には出兵し帰らなかった人達も多くいただろう。
だからこそ親世代の「戦争はしてはいけない」という思いは今を生きる私たち以上に強くその子供である田中芳樹にも強く教えられただろう。
ではここに一つ疑問がある。
「戦争はしてはいけない」はわかった。
では「なぜ戦争をしてしまったのか」
それを教えられる大人が田中芳樹の周りにいたのだろうか。
私事になるが、私が幼い頃、学校の課題で祖母に戦争時代の話を聞いたことがある。戦争が終わった時、祖母は小学生だった。玉音放送を聞いたあと、その時の担任が泣きながらいった「私たちは間違っていた。もうどうすればいいのかわからない」といった言葉を今でも強く覚えているらしい。
「どこから間違ったのか」を答えられる人間なんてそうそういない。
ましてやその時生きていた片田舎の人々がどうこうできる問題ではなかった。
その泣いた担任も上の言われた通りに子供に良かれと思って教えていたのだ。
誰もが皆被害者であり加害者だったからこそ、「戦争はいけない」と次の世代に教える。しかし、なぜそうなったのかを答えられる人は田中芳樹の幼少期の頃でも今でも少ないかもしれない。
田中芳樹はその答えを探す教材に「歴史」を選んだのは必然だっただろう。
そして、たどり着いた答えは至極シンプルなものだった。
楽をしたかったから
ヤンの父タイロンも幼き頃のヤンに言っている(ノイエ版4話はまさに名シーンだと思っています)
だからこそヤンは楽をせずに上に言われたまま法律上の権利しか行使せずに黙々と軍人をする。
田中芳樹がどんなに専制政治の帝国を勝たせても民主主義である同盟を生き残らせた理由もそこにある。
専制政治を一部に任せ、民衆が楽をする思想であるなら、民主主義は一人一人が少しずつ苦労を背負わせていく思想である。
言葉を変えれば専制政治は未来にツケを残す思想、民主主義は未来に可能性を残す思想である。
銀河英雄伝説の中で専制政治を批判する理由として「より良い専制君主がいても後のダメな君主が必ず国を亡ぼす」と書かれている。
だから同盟には必ず残ってもらわなければいけないのだ。
ヤンのあの読者に寄りそう人間臭さは民主主義の正当性を強化するために必要なキャラクターになる。
しかし、それと同時に幼き日の田中芳樹と同じ疑問を抱いている読者に田中芳樹の答えをヤンを通じて教えているのだ。
ヤンは作品を通して民主主義の「自由と責任」を身をもって読者たちに伝えている。
民主主義のためにつくられたヤンだからこそ、様々な媒体で様々な解釈がされるのだろう。