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【映画レポ】映画「ジェニーの記憶」 こんなに勧めたいのに勧めにくい映画は初めて

最近Twitterで話題になっていた作品をみたのでレビュー。

性的な描写がありますのでご注意ください

 

 

 

 

概要

監督のジェニファー・フォックスが、自身の少女時代に高校のコーチに性的いたずらを受けた経験を詳細に語る力強く心を揺さぶる作品。おぞましい現実の状況についての自分の記憶を受け入れるよう突き動かされる、大人になったジェニファーをローラ・ダーンが演じる。共演は、エリザベス・デビッキ、ジェイソン・リッター、フランセス・コンロイ、コモン、エレン・バースティン、イザベル・ネリッセ。脚本・監督はジェニファー・フォックスによる。

 

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アマゾンプライムでみました。

 

 
見ごたえ、かなりありました。
 

一人の女性の記憶をたどる旅

主人公のジェニファー(ジェニー)はノンフィクション作家としてのキャリアを成功させ、大学の教師にもなっています。
また、プライベートでは婚約者との結婚式の準備をしている。
 
順風満帆といえる人生ですが、ある日、彼女の母親から一本の電話から物語が始まるのです。
それは彼女が一番初めに付き合った男性(ビル)との話。
ビルは当時13歳の彼女よりかなり年上(40歳)。
彼ともう一人の馬術教師の先生との三人の秘密の関係についてでした。
 
母親は彼らとの手紙のやり取り、また13のジェニーが書いた物語から「自分の子は性的虐待をうけていた」という事実に驚き、急いでジェニーに連絡をとったのです。
 
慌てる母親に対してジェニーは「彼とはほんの少し年上だっただけだけど同意の上だった」と言います。
しかし、母親から送られた自分が書いた当時の物語をみて自分の記憶と向き合っていくのです。
 

演出の生々しさ

アジア人と欧米人では顔の形が違うので、一般的にアジア人の私としては欧米人の顔は実年齢より年上にみえます。

「これで、普通のカップルに見えたら感情移入しにくいな」と思っていました。

が、映画序盤で自分のイメージしていた外見から実際にビルと出会った当時の姿で切り替わるシーンでその考えは覆されました。

 

確かに顔立ちは大人びているものの、それはまごうことなき「子供」でした。

そりゃそうだ。13なんて去年まで小学生だった年齢だもの。

 

現代のジェニーと過去のジェニーの回想。

ジェニーが心の中にいる当時の大人たちとのインタビューシーンがとてもリアルに感じました。

 

幼い子供に欲求をみる大人

よく「女は若いほどいい」という言葉を耳にしますね。

では若いほどってどれくらいなんでしょうか?

 

先述したビルと先生と出会った実際のジェニーの姿で過去のシーンをみるとこの幼い13の少女に性的欲求を持ったビルに気持ち悪さを持ちました。

それはジェニーをビルの元に抱き合わせた先生もそうです。

 

ビルと不倫関係にあった先生はなにをもってジェニーにビルと合わせたのでしょう。

二人はこの関係を「結婚を超えた関係」や「家族を超えた関係」と言い風にジェニーにかたり、小さな疑似家族をつくろうとしていました。

ジェニーはそれを魅力的に感じてしまいます。

 

が、そこにジェニーの純粋な気持ちはどこにあるのでしょうか?

 

かっこよくてイケメンと美女の大人に言葉巧みに操れられ、誘導される姿、見る観客にはわかるけど当時のジェニーはわからない。

そのままジェニーは誘導されるままに性的虐待をされていく姿がとてもリアルに感じました。

 

 

 

性的虐待というテーマ

 この映画、監督のジェニファー・フォックスが、自身の少女時代に高校のコーチに性的いたずらを受けた経験を元に作られています。
当初は配給会社に断られるなど苦難の連続のようでしたが、こうやってアマゾンプライムで様々な人に見る事ができるようになったのはよかったと思います。
 
ストーリーはとてもよくまとまっていて、時折主人公のジェニーが精被害者の女性のインタビューを編集しているシーンがうつるんですね。
それがインタビューからジェニーの心の苦しみを代弁するかのようなようになって他人事のように見ていた観客によりリアリティをもって伝わってきたと思います。
 

搾取されていたことを理解したシーン

ジェニーが自分は性的虐待を受けていたと心から理解したシーンはおそらく授業のシーンでしょう。

取材する対象に取材する側の自分もさらけ出すことが大切といったジェニーはある一人の女生徒に自身の初体験を語らせます。

最初は恥ずかしがっていた女生徒ですが次第に早口になり興奮して喋る姿が印象的でした。

 

その女性との初体験は16の時、小学校から付き合いのある男子とで、互いにとても労わってやってくれたこと、そして快感を得たことを語りました。

 

その時のジェニーの脳裏にはビルがまだ13の未成熟の自分の体と性行為を及ぼうとし、その中で「血が出るのは当たり前」、「苦痛を受け入れろ」と言いながら行為を及ぶのです。

もし、ビルが本当にジェニーのことを理解していたなら家にも泊まらせず、行為には絶対及ばなかったでしょう。が、ビルはジェニーを誘導し行為を及ばせた。

 

幼いジェニーはOKはしても体は苦しんでいました。

好意の後は必ず吐き、体を壊してしまうのです。

 

ラストについて

監督の実体験を描きつつ無駄のない構成はさすがだと思いましたが、印象深かったのはラストです。
 
自分を性的虐待したビルにジェニーは会いに行きます。
そこには成長し、「結婚は悪だ」と言っていたビルが妻を持っていて、陸上の指導者として称賛されている姿でした。
 
ジェニーはその年おいたビルに詰め寄ります。
が、周囲の戸惑いに耐え切れずジェニーは言い終わったあと、会場のトイレに行くのです。
そこで吐くと、ジェニーは壁に寄りかかります。
その隣には13歳の幼い自分。
映画の初めに出てきたジェニーの物語の初めの一文がまた朗読されます。
もう最後まで見た観客はこれが美しい話とは思えないでしょう。
 
もし、これが当事者ではない監督が描いたらそのままビルを訴訟などハッピーエンドを予測するラストになったはずです。
しかし、この映画のラストはそれではなく、ただジェニーがトイレの壁にもたれかかるまま終わります。
 
それは、加害者を詰ってもジェニーがその性的虐待からの脱却ができず苦しんでいるということの表れではないでしょうか。
つまり、実体験を描いた監督自身もいまだ脱却できていないことを表すのです。
 

勧めたくても勧められない

 とてもすばらしい映画でした。

普段なら勧めるところですが、私は勧めにくい映画だと思いました。

 

映画の作中で同じビルから搾取されていた当時のジェニーより年上の女の子がいました。

彼女は年を取ったジェニーに嬉々として先生とビルと自分の3人で行為をしたと語ります。

が、ジェニーが当時ビルと付き合っていたこと、自分は13だったこと、そして自分を含む4人で行為をしようと話していたことを彼女に語ると、彼女は絶句をします。

その彼女もビルに搾取されていたことにジェニーと同じく時を経て気が付いたのでしょう。

 

もしかしたら勧めた私も勧めた誰かのトラウマの扉を開いてしまうかもしれない。

けどぜひ人に勧めたい、そんなことを感じる映画でした。

 

2020年9月4日追記

小児性愛加害者について書かれた本を読みました。

 

 

art11art.hatenablog.com

 

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